事務所からのお知らせ
2024年1月9日
特定建設業の許可の要件
一般建設業許可を受けるための要件として、建設業法第7条には許可要件について、建設業法第8条には欠格要件についての条文があることについては別記事で説明をしました。しかし、特定建設業の許可を受ける際の要件はもっとハードルが高いものとなっており、建設業法第15条にその規定があります。本記事では、この内容について少し深堀りしてみましょう。まずは、その条文についてご確認ください。
【建設業法】
第15条 国土交通大臣又は都道府県知事は、特定建設業の許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。第7条第1号及び第3号に該当する者であること。
2 その営業所ごとに次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。ただし、施工技術(設計図書に従つて建設工事を適正に実施するために必要な専門の知識及びその応用能力をいう。以下同じ。)の総合性、施工技術の普及状況その他の事情を考慮して政令で定める建設業(以下「指定建設業」という。)の許可を受けようとする者にあつては、その営業所ごとに置くべき専任の者は、イに該当する者又はハの規定により国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者でなければならない。
イ 第27条第1項の規定による技術検定その他の法令の規定による試験で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものに合格した者又は他の法令の規定による免許で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものを受けた者
ロ 第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者のうち、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものに関し二年以上指導監督的な実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
3 発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること。
法第15条第2号ただし書の建設業 | 【政令第5条の2】 法第15条第2号ただし書の政令で定める建設業は、次に掲げるものとする。 1 土木工事業 2 建築工事業 3 電気工事業 4 管工事業 5 鋼構造物工事業 6 舗装工事業 7 造園工事業 |
法第15条第2号ロの金額 | 【政令第5条の3】 法第15条第2号ロの政令で定める金額は、4,500万円とする。 |
法第15条第3号の金額 | 【政令第5条の4】 法第15条第3号の政令で定める金額は、8,000万円とする。 |
ここで、一般建設業及び特定建設業に共通する建設業許可の許可を受けるための許可要件と欠格要件を簡単にまとめると次のようになります。
【許可要件】 Ⅰ 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準 常勤役員等の体制が一定の条件を満たし適切な経営能力を有すること。 Ⅱ 社会保険の加入 適切な社会保険にへ加入(届出)していること。 Ⅲ 営業所における専任技術者(専技)の設置 営業所ごとに「専任技術者」を配置していること。 Ⅳ 請負契約における誠実性 請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。 Ⅴ 財産的基礎又は金銭的信用 請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること。 |
【欠格要件】 Ⅰ 許可申請書若しくは添付書類中の虚偽記載又は、重要な事実の記載が欠けていること。 Ⅱ 建設業法第8条各号のいずれかに該当する場合。 |
これらの中で、一般建設業と特定建設業で異なっている部分は、「専任技術者の設置」と「財産的基礎」の部分になります。この2つについて、詳しくみていきましょう。
1 専任技術者の設置について
「専任技術者の設置」に関してですが、建設業法第15条第2項イ、ロ、ハの3つの要件のうち、いずれかを満たす必要があります。
まず1つ目の要件であるイ項は、技術検定の合格、試験の合格、免許の保有により専任技術者としての要件を満たすことが規定されています。
技術検定については、第27条第1項で規定されており、その内容は次のとおりです。
【建設業法】
(技術検定)
第27条 国土交通大臣は、施工技術の向上を図るため、建設業者の施工する建設工事に従事し又はしようとする者について、政令の定めるところにより、技術検定を行うことができる。
2 前項の検定は、これを分けて第1次検定及び第2次検定とする。
3 第1次検定は、第1項に規定する者が施工技術の基礎となる知識及び能力を有するかどうかを判定するために行う。
4 第二次検定は、第一項に規定する者が施工技術のうち第26条の4第1項に規定する技術上の管理及び指導監督に係る知識及び能力を有するかどうかを判定するために行う。
5 国土交通大臣は、第1次検定又は第2次検定に合格した者に、それぞれ合格証明書を交付する。
6 合格証明書の交付を受けた者は、合格証明書を滅失し、又は損傷したときは、合格証明書の再交付を申請することができる。
7 第1次検定又は第2次検定に合格した者は、それぞれ政令で定める称号を称することができる。
試験及び免許については国土交通省の告示で示されています。
【建設業法第15条第2号イの国土交通大臣が定める試験及び免許を定める件(最終改正国土交通省告示第496号)】
土木工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の建設機械施工又は1級の土木施工管理とするもの 2 技術士法(昭和58年法律第25号)による第2次試験のうち技術部門を建設部門、農業部門(選択科目を「農業農村工学」とするものに限る。)、森林部門(選択科目を「森林土木」とするものに限る。)、水産部門(選択科目を「水産土木」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を建設部門に係るもの、「農業農村工学」、「森林土木」又は「水産土木」とするものに限る。)とするもの |
建築工事業 大工工事業 屋根工事業 タイル・レンガ・ブロック工事業 内装仕上工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の建築施工管理とするもの 2 建築士法(昭和25年法律第202号)による一級建築士の免許 |
左官工事業 鉄筋工事業 板金工事業 ガラス工事業 防水工事業 熱絶縁工事業 建具工事業 | 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の建築施工管理とするもの |
とび・土工工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の建設機械施工管理、1級の土木施工管理又は1級の建築施工管理とするもの 2 技術士法による第2次試験のうち技術部門を建設部門、農業部門(選択科目を「農業農村工学」とするものに限る。)、森林部門(選択科目を「森林土木」とするものに限る。)、水産部門(選択科目を「水産土木」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を建設部門に係るもの、「農業農村工学」、「森林土木」又は「水産土木」とするものに限る。)とするもの |
石工事業 塗装工事業 | 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の土木施工管理又は1級の建築施工管理とするもの |
電気工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の電気工事施工管理とするもの 2 技術士法による第2次試験のうち技術部門を電気電子部門、建設部門又は総合技術監理部門(選択科目を電気電子部門又は建設部門に係るものとするものに限る。)とするもの |
管工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の管工事施工管理とするもの 2 技術士法による第2次試験のうち技術部門を機械部門(選択科目を「流体機器」、「熱・動力エネルギー」とするものに限る。)、上下水道部門又は衛生工学部門又は総合技術監理部門(選択科目を「流体機器」、「熱・動力エネルギー」又は上下水道部門若しくは衛生工学部門に係るものとするものに限る。)とするもの |
鋼構造物工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の土木施工管理又は1級の建築施工管理とするもの 2 建築士法による1級建築士の免許 3 技術士法による第2次試験のうち技術部門を建設部門(選択科目を「鋼構造及びコンクリート」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を「鋼構造及びコンクリート」とするものに限る。)とするもの |
舗装工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の建設機械施工又は1級の土木施工管理とするもの 2 技術士法による第2次試験のうち技術部門を建設部門又は総合技術監理部門(選択科目を建設部門に係るものとするものに限る。)とするもの |
しゅんせつ工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の土木施工管理とするもの 2 技術士法による第2次試験のうち技術部門を建設部門、水産部門(選択科目を「水産土木」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を建設部門に係るもの又は「水産土木」とするものに限る。)とするもの |
機械器具設置工事業 | 技術士法による第2次試験のうち技術部門を機械部門又は総合技術監理部門(選択科目を機械部門に係るものとするものに限る。)とするもの |
電気通信工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の電気通信工事施工管理とするもの 2 技術士法による第2次試験のうち技術部門を電気電子部門又は総合技術監理部門(選択科目を電気電子部門に係るものとするものに限る。)とするもの |
造園工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の造園施工管理とするもの 2 技術士法による第2次試験のうち技術部門を建設部門、森林部門(選択科目を「林業・林産」又は「森林土木」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を建設部門に係るもの、「林業・林産」又は「森林土木」とするものに限る。)とするもの |
さく井工事業 | 技術士法による第2次試験のうち技術部門を上下水道部門(選択科目を「上水道及び工業用水道」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を「上水道及び工業用水道」とするものに限る。)とするもの |
水道施設工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の土木施工管理とするもの 2 技術士法による第2次試験のうち技術部門を上下水道部門、衛生工学部門(選択科目を「水質管理」又は「廃棄物・資源循環」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を上下水道部門に係るもの、「水質管理」又は「廃棄物・資源循環」とするものに限る。)とするもの |
消防施設工事業 | |
清掃施設工事業 | 技術士法による第2次試験のうち技術部門を衛生工学部門(選択科目を「廃棄物・資源循環」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を「廃棄物・資源循環」とするものに限る。)とするもの |
解体工事業 | 1 建設業法による技術検定(第2次検定に限る。)のうち検定種目を1級の土木施工管理又は1級の建築施工管理とするもの 2 技術士法による第2次試験のうち技術部門を建設部門又は総合技術管理部門(選択科目を建設部門に係るものに限る。)とするもの |
次に2つ目の要件であるロ項は、建設業法第7条第2号イ、ロ又はハに該当し、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものに関し2年以上指導監督的な実務の経験を有する者も専任技術者となることができます。
最後の要件であるハ項は、国土交通大臣が上記イ又はロと同等以上と認めた者も専任技術者になることができると規定されています。
ここで、注意が必要な業種もあります。政令第5条の2に定められた指定建設業、すなわち土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7種については、「イに該当する者」又は「ハの規定により国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者」でなければならない、と規定されているため、2年以上の実務経験があっても特定建設業の専任技術者となることができません。
2 財産的基礎について
一般建設業と特定建設業の許可要件の大きな相違点のうち、2つ目の「財産的基礎」に関してですが、建設業法第15条第3項の条文は「発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること。」であり、政令で定める金額は8,000万円であることは前述しました。
ここでいう「財産的基礎」ですが、建設業許可事務ガイドラインに、基準が示されています。
「財産的基礎について(法第15条第3号)」
(1)次のすべての基準を満たす者は、倒産することが明白である場合を除き、この基準を満たしているものとして取り扱う。
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
②流動比率が75%以上であること。
③資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること。
(2)「欠損の額」とは、法人にあっては貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合にその額が資本剰余金、利益準備金及び任意積立金の合計額を上回る額を、個人にあっては事業主損失が事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額をいう。
(3)「流動比率」とは、流動資産を流動負債で除して得た数値を百分率で表したものをいう。
(4)「資本金」とは、法人にあっては株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額をいい、個人にあっては期首資本金をいう。
(5)「自己資本」とは、法人にあっては貸借対照表における純資産合計の額を、個人にあっては期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいう。
(6)この基準を満たしているかどうかの判断は、原則として既存の企業にあっては申請時の直前の決算期における財務諸表により、新規設立の企業にあっては創業時における財務諸表により、それぞれ行う。 ただし、当該財務諸表上では、資本金の額に関する基準を満たさないが、申請日までに増資を行うことによって基準を満たすこととなった場合には、「資本金」については、この基準を満たしているものとして取り扱う。
以上、特定建設業の許可要件及び欠格要件について、主に一般建設業許可との相違点を中心に説明してまいりましたがいかがだったでしょうか?
はっきりいってとても複雑ですね。
許可要件については、判断が難しく、建設業許可を受けようか検討している方にとっては自分の会社が要件をクリアしているかどうか非常に迷う部分もあると思います。
当事務所では、しっかりと状況を聞き取りしたうえで、許可を受けることができるかどうかについてすみやかに回答いたします。
建設業の許可を受けたいと思っている方、まずはご相談ください。
【以下、事務所の宣伝です。】
行政書士田村隆二事務所は、
1 相談料・着手金「0円」
2 完全成功報酬(許可が取得できなかった場合は料金は「0円」)
3 追加料金「0円」(料金は見積時に提示した料金以外は一切いただきません。)
当事務所は、建設業許可を専門に取り扱っている行政書士事務所です。
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建設業許可の取得をご検討されている皆様からのご連絡をお待ちしております。